- 夏に突然あらわれた氷山、そして謎の少女
- 恋と友情と少し不思議
- 不器用な家族のカタチ
- ひと夏だけの宝物みたいな冒険と青春
感想
謎の氷山が出現した二千三十五年の夏。かつて仲良し4人グループだった進と羽と一輝、そして天音。天音が不在な中、バラバラになってしまっていた3人が氷山と共に現れた謎の少女日暈によってまた一緒に夏を過ごしだす少し不思議な青春物語。
物語の中心になるのは家族と自分自身に悩みを抱える少年少女、進と羽と一輝。それ以外にも周りの大人たちの心情も三人称で描かれていました。読み心地としては、群像劇みたいな印象を受けましたね。面白かったです。
最初は全員が鬱屈とした想いを抱え停滞している雰囲気でしたが、謎の少女日暈が現れてから少しずつ変化が訪れ、終盤では怒涛の展開で家族と恋と友情のお話になっていくのがとてもよかった。日暈が無邪気で可愛い子で大好き。それだけに羽の態度はずっと引っかかっていましたが、ひたむきに友達になりたいと向き合う日暈が可愛かったのでよし。
それぞれひどく不器用ながらも結ばれていく家族の絆にも、心撃ち抜かれました。特に鉄っちゃん・優月さんは、もうずるいよ、あれは。大人だって悩んで失敗して、それでも家族になりたいと足掻く姿は胸にグッとくるものがありました。あと羽のおばあちゃんね、手紙は泣くからダメなんだって……。
そしてなにより、このお話はひと夏だけの宝物みたいな冒険と青春なんですよね。この夏の主役は誰なのか。読んだ後は、爽やかで優しい気持ちになれる素敵な作品でした。